病院紹介:市立豊中病院について

市立豊中病院広報誌 病院だより No.50(平成31年3月発行)

第16回 市立豊中病院 がん医療市民公開講座

平成30年(2018年)10月14日(日)豊中市立文化芸術センター大ホールにおいて、シリーズ第16回目の「がん医療市民公開講座」を開催いたしました。
今回は、「かなり治るようになってきた胃がん」と「まだまだ難治性の膵臓がん」について、2講演をお届けしました。

第一講
「胃がんの治療と療養の“今”  健康長寿をめざした胃がん治療」

市立豊中病院 消化器外科部長 兼 がん診療統括センター長 今村 博司 医師

日本では、胃がんで命を落とす人の割合は年々低下しています。つまり、胃がんは徐々に治る病気になっています。そこで今回、胃がんの治療を受ける際に、治癒、すなわち、胃がんを克服するだけでなく、胃がんになる前と同様に元気で楽しく生きていただくために、「健康長寿をめざした胃がん治療」についてお話します。

男性の部位別がん死亡率の増減
増加 なし
減少 食道、胃、直腸、肝臓、胆のう・胆管、肺、前立腺、甲状腺、白血病
女性の部位別がん死亡率の増減
増加 子宮、子宮頚部、子宮体部
減少 食道、胃、直腸、肝臓、胆のう・胆管、肺、卵巣、甲状腺、白血病
胃がんの手術による後遺症

胃がんの手術は、胃の下3分の2の切除や胃全摘術など、広範囲な胃切除が必要になる場合があります。胃は食事に関するさまざまな働きを担っていて、食べたものをためる、食事量を調節する、消化し十二指腸に送る、などがあります。胃切除術を受けると、このような胃の働きに障害が発生し、さまざまな食事に関する後遺症が起こります。これが胃切除術後障害です。

この障害は、少しの食事しか摂れなくなったり、適切な食事量がわかりにくくなることがあります。その結果、おなかが張った感じや吐き気、嘔吐、消化不良による下痢や便秘などが起こります。これまでは、胃切除術で体重減少や栄養失調気味になることは仕方のないことで、受け入れざるを得ないこととされてきました。

後遺症が健康長寿を妨げる

胃切除後術後障害に対しては、1回の食事量を減らして食事の回数を増やしたり、間食を推奨することなど、さまざまな栄養指導を行ってきました。しかし、胃切除術の1年後には5~15%程度の体重減少が起こります。これは筋肉量の減少を伴う不健康な体重減少です。その結果、筋力の低下から日常生活において活動性が低下したり、栄養失調で抵抗力の低下などを引き起こします。手術で胃がんが治癒しても、手術の後遺症で寝たきりや介護が必要となれば、健康長寿が達成できなくなります。

健康長寿を達成するために

重要なことは手術後の筋肉量の減少を食い止めることです。そのために必要なのは栄養と運動です。そもそも筋肉は主にたんぱく質でできているので、三大栄養素であるたんぱく質、炭水化物、脂質の中の特にたんぱく質を積極的に摂取することが効果的です。しかし、栄養摂取だけでは筋肉量の減少を食い止めることは困難で、適度な運動がとても重要になります。ベッド上で安静を続けるのではなく、医療者の指示や管理のもとに、立ってみる、歩いてみるということを積極的に行いましょう。

手術から順調であれば10日余りで退院となりますが、退院後も家で栄養と運動に関する取組みを継続することが、胃切除後術後障害を克服し健康長寿を達成する早道であると考えられます。

胃切除後術後障害を克服し健康長寿を達成するためには、術後の早期離床、そして適切な栄養摂取と運動療法で、筋肉量の減少を食い止めることがとても重要です!

豆知識

健康長寿

健康寿命とは、日常的、継続的な医療・介護に依存しないで、自分の心身で生命維持し、自立した生活ができる生存期間のことです(世界保健機関 2000年)。平成28年(2016年)の平均寿命は、日本人男性80.98歳、日本人女性87.14歳ですが、健康寿命は日本人男性72.14歳、日本人女性74.79歳でした。平均寿命と健康寿命の差が「要介護状態」の期間を意味しますから、人生の最後に日本人男性では約9年間、女性では約12年間、要介護状態になっているのです。平均寿命を伸ばすことはもちろん重要なことですが、健康寿命を伸ばすことも、元気で楽しく生きていただくためにとても重要なことです。

第二講
「正しく知ろう!膵臓がん」

市立豊中病院 外科(肝胆膵)医長 冨丸 慶人 医師

どんな病気?

膵臓に発生する腫瘍にはさまざまな種類がありますが、いわゆる“膵がん”とは膵臓の腫瘍のうち膵管上皮から発生する浸潤性しんじゅんせい膵管癌のことで、膵臓に発生する腫瘍の約90%を占めます。国立がん研究センター「2018年のがん統計予測」では、膵がんの罹患数りかんすうは約4万人、死亡数は約3万4900人とされ、これらの値が非常に類似していること、また、がんの部位別の5年相対生存率(欄外参照)において、7.9%と最も低いことから、膵がんは最も生命を救い難いがんであると言えます。

早期の状態では、腹部違和感、食欲不振などの症状が現われることがありますが、これらは膵がんに限ったものではありません。無症状で発見される場合が15.4%であるのに対して、初発症状は腹痛(31.6%)、黄疸(18.9%)、背部痛(8.6%)の順に多いとされています。その他、糖尿病の新規発症や悪化を認める場合もあります。

5年相対生存率

あるがんと診断された場合に、治療でどのくらい生命を救えるかを示す指標です。あるがんと診断された人のうち5年後に生存している人の割合が、性別、年齢、生まれた年などの点で同じ特性を持つ日本人の集団のうち、5年後に生存している人の割合に比べてどのくらい低いかで表します。100%に近いほど治療で生命を救えるがん、0%に近いほど治療で生命を救い難いがんであることを意味します。(出典:国立がん研究センターがん情報サービス 【外部サイト】

どんな人がなりやすい?

いくつかの遺伝子変異が膵がんの発生に関与することが明らかになっていますが、特定の原因は現時点では明らかにされていません。一方、危険因子はこれまでにさまざまな観点から多く確認されています。これらの危険因子を有する場合は、膵がん発症を念頭においた検査を定期的に行うことが望ましいでしょう。

膵がんの危険因子
(出典:日本膵臓学会 膵癌診療ガイドライン改訂委員会編. 科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン 2016 年版. 東京:金原出版, 2016.「膵がんの危険因子」より引用改変)
自分の病気 肥満、糖尿病、慢性膵炎、遺伝性膵炎
年齢 高齢
家族の病気 膵がん家族歴、遺伝性膵がん症候群
職業 塩素化炭化水素(クロロホルムなど)を扱う仕事
嗜好 喫煙、アルコール
膵がん発見のための検査

一般的に膵がんが疑われる場合、腫瘍マーカーの採血検査、腹部超音波検査、CT、MRI を行い、これらの検査結果をふまえて、超音波内視鏡検査、内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査、PET 検査、病理検査などを追加します。

早期発見としては、良好な予後が期待できる腫瘍径1センチメートル以下の段階での診断が目標とされています。そのような小型の膵がんの場合、約40%が無症状で、また、腹部超音波検査やCTでも腫瘍の発見が困難なことが多くあります。一方、超音波内視鏡検査では腫瘍の抽出率が高いことから、このような1センチメートル以下の病変に対しても有用です。わずかな膵管の拡張や狭窄を認める場合もありますので、内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査が有用な場合もあります。

膵がんの治療

膵がんの主な治療法としては外科治療、化学療法、放射線療法があり、がんの進行度に加え、患者さんの全身状態を考慮して、これらのうちの1つあるいは複数を組み合わせた治療を行います。手術はステージ0期と1期、そして2期の一部の膵がんに選択され、2期の一部、3期、4期の膵がんには化学療法または化学放射線療法が選択されます。

→バックナンバーはこちら

ページの先頭へ移動