病院紹介:市立豊中病院について

市立豊中病院広報誌 病院だより No.46(平成30年3月発行)

第15回 がん医療市民公開講座

平成29年(2017年)11月5日(日)豊中市立文化芸術センターにて、シリーズ第15回目の「がん医療市民公開講座」を開催いたしました。

「知ればこわくなくなる 大腸がん」
検診・早期発見と内視鏡治療

市立豊中病院 消化器内科部長 兼 内視鏡部長 西田 勉 医師

統計

国立がん研究センターによる「2017年のがん統計予測」では、新たにがんと診断される101万人のうち、大腸がんが約15万人と第1位となっています。全国がんセンター協議会の調査によると、診断10年後の生存率はすべてのがんについては約58%ですが、大腸がんは70%、またステージⅠ期という初期であれば97%と非常に高くなっています。大腸がんは診断される方は多いものの、早期に発見すれば治る率が非常に高いがんです。

大腸がんとは

大腸は結腸と直腸からなり、直腸が肛門と繋がっています。深部の結腸は比較的管腔が広く、またこの部分では便はまだ液状のため通過障害の症状は出にくく、しこりや出血による貧血といった症状が主体となります。一方、S状結腸や直腸の場合は、便秘や血便、下痢などの症状が出ることもありますが、初期ではほとんど無症状です。粘膜に出来たがんは、周りの正常な組織を壊し粘膜の下に入り込み広がっていきます。粘膜の下に入り込んだがんは、その後、転移といって血液やリンパ液にのり全身に散らばり、散らばった先で増えて広がります。そのため、転移をする前に早期にがんを発見することが重要です。大腸がんはポリープからの発がんの他、潰瘍性大腸炎からの発がん、遺伝性大腸がんなどありますが、ポリープからの発がんが大腸がんの25%~50%を占めています。

予防

飲酒は、大腸がんのリスクが高くなることが知られています。1日あたりの摂取量が増えると、大腸がんのリスクも上昇します。飲む場合は、1日あたりアルコール換算で23グラム程度まで、日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本までがよいでしょう。運動を行い適正な体重を保つことも予防には重要です。

大腸がんの検査

大腸がん検診として広く実施されている便潜血検査は、便の血液反応を調べる検査です。便潜血検査受診者の約7%が陽性であり、便潜血検査後に内視鏡検査を受けられるのは約60~70%で、このうち、大腸がんが発見される割合は約3%となっています。

内視鏡検査について

ハイビジョン内視鏡は約80倍のズーム機能があり、8ミクロン程度の毛細血管の形態も明瞭に捉えることが可能で、170度と広い視野角で確認することができます。さらに、NBIという特殊な光で観察することで、粘膜の毛細血管の形態などがはっきりと見えます。また粘膜を色素で染色して見ると、粘膜表面の細かい模様やいびつな形で不規則な細胞がないかどうかを鮮明に確認できます。しかし現状は、便潜血検査で陽性であった方が内視鏡検査を受ける割合はあまり高くありません。

当院の内視鏡検査では、平均8分、早い場合は2~3分で大腸の最深部まで到達しています。また、検査の際に空気で大腸を膨らませると、検査後もおならが出るまで膨満感が持続しますが、当院では空気の代わりに、大腸の粘膜から吸収され呼気から排出される二酸化炭素を使用しています。また、少し条件はありますが麻酔をかけての検査も行っており、女性医師による検査も可能です。

内視鏡治療

内視鏡治療にはいくつかの方法があります。ポリープやがんの大きさや状態などにより、どの内視鏡治療になるのか決定していきます。

ポリペクトミー
ポリープをワイヤーのようなもので引っかけ、ワイヤーに電気を通しポリープを焼き切って切除する方法です。
コールドスネアポリペクトミー
電気を通さずにワイヤーでポリープを引きちぎる方法で、5ミリメートルぐらいの小さなポリープに対して適応があり、合併症も少ないです。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
切除する箇所の下に注射針で生理食塩水を注射して人工的に水膨れをつくって、水膨れごと切除する方法です。合併症として、ワイヤーに電気を通して焼き切る際に出血や、まれに腸壁に穴があく穿孔が起こることがあります。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
切除箇所の下に液体を注入し、電気メスで周囲を切開してから剥がす方法です。ポリープが大きくワイヤーを引っかけることが出来ない場合にも、この方法により切除が可能です。

豆知識

大腸内視鏡検査による大腸がん予防

大腸内視鏡検査の大腸がん予防に関する有効性に関して、米国National Polyp Study(全米ポリープ研究)を紹介します。11980年(昭和55年)から10年近い期間で行われたこの研究で、大腸内視鏡検査で見つかったすべてのポリープを切除すること(クリーンコロン化)で、その後76~90%の大腸がん発生を減らし、大腸がんでの死亡率を53%低下させることが示されました。その後も多くの類似の研究が報告されており、大腸がん予防において、大腸内視鏡検査が非常に強力な手段であることが確立しました。

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