病院紹介:市立豊中病院について

市立豊中病院広報誌 病院だより No.26(平成25年1月発行)

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胃がんの診断・治療の最前線から

(平成24年11月17日(土曜日)第10回市立豊中病院がん医療市民公開講座より。)
日本で生涯に、がんにかかる割合は、男性54%、女性41%で、2人に1人はがんにかかる計算になります。それほどがんは身近な病気なのです。
今回で10回目となる「がん医療市民公開講座」は、上部消化管外科 今村部長と消化器内科 澁谷医長による胃がんについての講演を行いました。

日本人の死亡原因

日本人の死亡原因は昭和55年までは、脳血管障害が1位でした。しかし、昭和60年以降がんが1位となり、現在は2人に1人が、がんにかかる時代となりました。その中で胃がんは、死亡順位が男性で2位、女性3位と高く、年間約50,000人の方が亡くなっています。

(昭和55年まで)
1位. 脳血管障害、2位. がん、3位. 心疾患

(昭和60年以降)
1位. がん、2位. 心疾患、3位. 脳血管障害

胃がん死亡数順位

男性 2位/女性 3位

死亡数

男性32,943人/女性17,193人 (出典:平成22年 厚生労働省「人口動態統計」)

生涯がん罹患リスク(%)

全がん(男性 54% ※2人に1人の割合 / 女性 41% ※2人に1人の割合)
胃がん(男性 11% ※9人に1人の割合 / 女性 6% ※18人に1人の割合)
(出典:平成21年国立がん研究センター がん対策情報センター)

がんの基礎知識

人の体は、約60兆個の細胞からできています。これらの細胞が環境や生活習慣など多くの因子により、一部が「がん細胞」に変化します。

正常細胞

  • 細胞分裂が制御されている
  • 分裂回数に制限がある
  • 他所に定着しない

がん細胞

  • 分裂・増殖し続ける
  • 他の組織や臓器でも増殖する(浸潤・転移)

胃がんの原因
  • 環境・生活習慣、塩分の過剰摂取、喫煙など
  • ヘリコバクター・ピロリ菌による胃粘膜の慢性炎症
  • 遺伝子

胃がんの検診

胃がんは早期では、ほとんど症状がありません。進行がんですら特有の症状がないことも多く、かなり進行してから病院にこられる患者さんもいます。がんの早期発見には検診が重要となってきます。

検診

胃X線検査…バリウム検査/腫瘍マーカー(早期がんには不適)

  • 異常あり
    精密検査(胃カメラ)→病理検査(組織検査)…良性かがんの判定→胃がんと診断→医療機関で治療
  • 異常なし
    定期的に検診を受けましょう

胃がんの進行度と治療

胃がんの進行度(ステージ)は、深さ(深達度)とリンパ節転移で決まります。

胃がんの進行度(深達度)
早期がん
T1…粘膜、粘膜下層にとどまる。リンパ節転移なし…ⅠA期、1-2個…ⅠB期、3-6個…ⅡA期、7個以上…ⅡB期
進行がん
T2…固有筋層までにとどまる。リンパ節転移なし…ⅠB期、1-2個…ⅡA期、3-6個…ⅡB期、7個以上…ⅢA期
T3…漿膜下組織までにとどまる。リンパ節転移なし…ⅡA期、1-2個…ⅡB期、3-6個…ⅢA期、7個以上…ⅢB期
T4a…漿膜を超えて胃の表面にでている。リンパ節転移なし…ⅡB期、1-2個…ⅢA期、3-6個…ⅢB期、7個以上…ⅢC期
T4b… ほかの臓器にも広がっている。リンパ節転移なし…ⅢB期、1-2個…ⅢB期、3-6個…ⅢC期、7個以上…ⅢC期
Ⅳ期…肝転移・腹膜転移・領域リンパ節以外転移・腹腔細胞診でがん細胞を認める

粘膜下層より深くなるとリンパ節転移がおこります。深達度が深くなるほど転移しやすくなります。

胃がんの転移

リンパ行性転移
リンパ節から次のリンパ節へと順番に広がる
血行性転移
血に乗ってがんが転移する
腹膜藩種性転移
胃の外に出たがんがお腹にばら撒かれ転移が起こる

胃がんの治療

内視鏡治療

胃がんは、必ず粘膜から発生します。この段階(粘膜、粘膜下層にとどまる)であれば胃カメラで治療できる可能性があります。内視鏡的粘膜切除術は、身体への負担が少なく開腹手術に比べ入院期間も短期間となります。

開腹手術・腹腔鏡手術

がんが粘膜下層より深くなると、手術が必要になります。通常、胃の3分の2以上の切除、または、胃の全摘手術を行います。

抗がん剤治療(化学療法)

血行性転移・腹膜藩種性転移の場合、手術では根治できないため、抗がん剤治療が基本となります。抗腫瘍効果が高く副作用の少ない抗がん剤の開発や副作用を軽減する治療法の進歩(制吐剤など)、チーム医療による治療サポートなどにより外来通院での抗がん剤治療ができるようになりました。

抗がん剤の副作用

白血球減少(感染)、血小板減少(出血)食欲低下、悪心・嘔吐、下痢、倦怠感、脱毛、手足のしびれ など
抗がん剤の効果が続く限り、副作用が許容範囲である限り、治療を続けていくことが重要です。

がん診療の地域医療連携

胃がんを治るレベルで発見するには、症状が出る前に検診や人間ドックを定期的に受けることが大切です。症状がでた時には、かなり進行しています。胃がんの5年生存率※1はⅠA期であれば93.4%、Ⅳ期だと16.6%まで下がります。(※1胃がん治療ガイドライン2001年12月版)
胃がんと診断されてからは、かかりつけ医と市立豊中病院とで連携して診察・治療にあたります。
早期発見・早期治療のためにがん検診を定期的に受けましょう!

診療科・部門案内

上部消化管外科

胃がん治療では、手術・化学療法を中心に、エビデンス(科学的根拠)に基づいた標準治療を安全かつ確実に行うことを第一の目標として診療に臨んでいます。食道がんについては、手術、化学療法、放射線療法を組み合わせて、根治性とQOL(生活の質)のバランスのとれた集学的治療を行っています。
外来診療では補助化学療法、緩和医療を含めて地域の医療機関と積極的に連携を進めています。
また、研究面では、将来の胃がん治療の発展のために厚生労働省助成のJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)をはじめとしたさまざまな臨床試験にも積極的に参加しています。

手術件数・治療(平成23年度)
  • 胃がん(117件)
  • 食道がん(5件)
  • 外来化学療法
  • 入院化学療法
  • 化学放射線療法
消化器内科(胃腸膵)

胃腸膵疾患全般に対応し、緊急を要する疾患は救急科・外科・放射線科と連携し対処しています。地域がん診療連携拠点病院として、がんの診断はもとより早期がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)(※注2)や進行がんに対する狭窄部へのステント留置術(※注3)などを積極的に行っています。年間約1,300人の入院診療、消化器疾患を中心とした外来診察および年9,000例を超える内視鏡検査・治療を行っています。

●診療実績(入院患者数)(平成23年度)
  • 胃がん(241件)
  • 食道がん(70件)
  • 膵がん(74件)
  • 大腸がん(107件)
  • 消化管出血(236件)
  • 腸閉塞(73件)
  • 炎症性腸疾患(30件)
  • 膵炎(60件)

※2 内視鏡的粘膜下層剥離術:早期がんに対し行われる内視鏡治療で、専用の処置具を用いて大きな病変を切り取ることが可能な治療法

※3 ステント留置術:ステントという金属の筒を血管に置き、狭くなった血管部分を拡がった状態に保持する

豆知識-ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)とは?

ピロリ菌は通常細菌が生息できないような、強い酸性の胃の中に住む特殊な細菌です。ピロリ菌は胃粘膜の慢性の炎症引き起こし、胃潰瘍・十二指腸潰瘍や胃炎の原因になっています。1994年にはWHO(世界保健機構)がピロリ菌を胃がんの発がん因子と指定しました。

ピロリ菌保菌数

日本人の約50%が陽性(50歳以上 約80%)

ピロリ菌の検査

慢性胃炎のため、胃痛や胃もたれの症状がある方や、胃潰瘍、十二指腸潰瘍を繰り返し再発されている方は検査により、ピロリ菌保菌の有無を調べることができます。

内視鏡検査

胃粘膜の一部を採取して行う

内視鏡を使わない検査
  • 抗体検査(血液・尿・便)
  • 尿素呼気試験(検査薬を飲んだ後に呼気を集め調べる)
ピロリ菌の除菌治療

除菌のみの治療は保険適用外となっています。特定の疾患のみ保険が適用されます。

保険適用疾患
  • 胃潰瘍
  • 十二指腸潰瘍
  • 胃MALTリンパ種
  • 特発性血小板減少性紫斑病
  • 早期胃がん内視鏡的治療後

ピロリ菌は飲料水から感染すると考えられていて、水質が良くなった現在は新たな感染者は減少しているとされています。

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